6月22日に開幕する2022年度前期日本卓球リーグ。男子1部では、2021年度後期日本卓球リーグで優勝した愛知工業大学をはじめ、協和キリン、日鉄物流ブレイザーズ、シチズン時計、クローバー歯科カスピッズ、信号器材、リコー、日野キングフィッシャーズの8チームが優勝を目指してしのぎを削る。
日野キングフィッシャーズは2021年度の前期日本卓球リーグで6位、後期日本卓球リーグでは最下位に終わるなど、苦しい戦いが続いていた。そんな中、今年は昨年度の全日本学生選手権シングルスベスト8の川上尚也(早稲田大学)と西康洋(明治大学)が新人選手としてチームに加入。また、これまでチームをけん引していた岩崎栄光が現役を退きコーチに就任、昨年度のチームで主将を務めていた船本将志が選手とコーチを兼任するなど、「変革」の時を迎えている。
チームへの期待感を象徴するかのように、小鷹好夫監督は今季リーグ戦の目標を過去最高の「4位以上」としている。今回、ミングルス編集部はそんな大きな目標に挑む日野キングフィッシャーズを取材。前後編の2回に分けて、大きな戦いに挑むチームを特集する。
- 目次
- 全日本学生選手権8強の西康洋と川上尚也が入部
- 「新人選手に刺激」ビッグTでは皆川・平野、弓取・遠藤が3位入賞
- 敗北から学んだ“大人の卓球”の戦い方
- ゴールド選手不在でも「チャレンジャーとして挑む」 >
全日本学生選手権8強の西康洋と川上尚也が入部
5月末のある日。東京都日野市にある日野自動車総合グラウンドを訪れた。体育館に入ると、小気味よいラリーの音が聞こえてくる。日が暮れかかった19時前。仕事を終えたキングフィッシャーズの選手たちが全員揃い、練習が始まる。
「正直、4月とかは本当にきつかったですね。日々の生活をこなしていって、慣れるのにすごく必死だったので。今はだんだんと仕事の方にも慣れてきて、少しずつ余裕が出てきて、卓球のプレーのほうも落ち着いてきたという感じではあります」。
笑顔でそう語るのは西康洋だ。
今年の4月から日野自動車に入社した西は、普段はフルタイムで仕事をした後にチームの練習に参加している。社会人としても1年目。日々の仕事のみならず実業団選手としてプレーをするのだから、きついとこぼすのも無理もない。
一方、同じく今年チームに加入した川上尚也はそんな忙しい生活の中にも充実感を得ているという。
「社会人になって卓球も仕事もやるハードな生活なんですけど、それが充実していると感じています。楽しいですね」。
西と川上は、それぞれ学生時代にも高いレベルでプレーをしていた選手だ。そんなルーキーたちについては小鷹監督も大きな期待を寄せている。
「(西と川上)彼らは全日本学生ベスト8の実績を持っています。今まではうちの選手でいくとベスト16ぐらいのレベルの選手が多かったんですけど、レベルアップした選手が入っているということが大きいです。
人間としても彼らは非常に真面目で、練習もストイックにやっています。彼らに引っ張られるような形で先輩たちもいいプレーをしていますし、精神的にも充実しているかなと思っています」。
「新人選手に刺激」ビッグTでは皆川・平野、弓取・遠藤が3位入賞
強力な新人選手たちの加入によって、その他の選手たちにも好影響が出ているという。
4月に行われたビッグトーナメント福島大会では、皆川朝・平野晃生ペア、弓取眞貴・遠藤竜馬ペアがそれぞれダブルスで3位入賞。西・川上の新人ペアもベスト8に食い込むなど、収穫の多い大会となった。
「1年目のフレッシュな若手が入ってきて、より層が厚くなった」と平野が語れば、2年目の弓取も「新人2人が入ってきて、いい雰囲気でやれている」と好感触。
「(ダブルスでは)新人選手はベスト8で負けてしまったのですが、皆川・平野、弓取・遠藤がそれぞれベスト4に入っています。そのあたりで見ても、先輩たちが新人選手に刺激を受けている結果かなと思います」と小鷹監督もチームの状態について手ごたえを語る。
敗北から学んだ“大人の卓球”の戦い方
実業団の大会でも結果を出している期待のルーキーだが、まだ課題も多いと西は語る。
「4月のビッグトーナメントは、正直すごく勝ちたくて、力が入りすぎていました。シングルスは結構早めに負けてしまって(※松平賢二に敗戦)、いい意味で落ち着けたかなと思います。自分の課題が見えたし、社会人同士の試合はやっぱり全然学生同士の戦いとは違いました。
相手も賢二さんだったので、ラリーとかできるかなって期待していたんですけど、自分の弱みを突くようなことばかりを徹底されて簡単に負けてしまったのがすごく悔しかったです。
そういった場面では、自分もただ気持ち全開で、ガッツでプレーするだけではなくて、それプラス、卓球の戦術的な要素だったり、うまさを出していかなければならないと思いました。大人のやり方というか、そういう戦い方を学ばされましたね」。
ビッグトーナメント福島大会シングルスでベスト16入りと大きな結果を残した川上にも油断をする様子はない。
「4月のビッグトーナメントはすごく調子が良くて、個人的にはいい結果を残すことができました。ですが、自分はチームの中では一番実力が低いと思っているので、人一倍頑張らなきゃいけないと思っています。チーム内で練習試合などをしても、いつも負けてばかりでチームメイトに全然勝てないんですよ。試合の運び方とかも考えていかないといけないと思っています」と謙虚に語る。
ゴールド選手不在でも「チャレンジャーとして挑む」
日本リーグ前期大会開幕まであと7日。ライバルとなる日鉄物流ブレイザーズやクローバー歯科カスピッズがゴールド選手(他所属からのレンタル)を登録する中、日野キングフィッシャーズはゴールド選手なしで戦いに挑む。
「他のチームはゴールド選手でいい選手を構えているので、それに負けないように、とにかくチャレンジャーとして挑んでいきたい」と小鷹監督。「チームとしての目標はベスト4以上だが、一番は優勝を狙っていく」(西)、「出た試合は絶対勝つという気持ちで全勝したい」(川上)と新人2選手も闘志を燃やす。
若さとパワーでチームを勢いづけられるか。ゴールド選手に負けない、日野キングフィッシャーズの「ゴールデンルーキー」たちの挑戦が始まる。
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