2010年7月に発売されて以来、多くの選手に愛用されている「ファスタークG-1」。速さ(=Fast)と弧を描くボール軌道(=Arc)をコンセプトに開発されたこの裏ソフトラバーは、「卓球王国」の用具売上ランキングで1位に輝くなど(2022年1月時点)、今なお根強い人気を誇る「Nittaku(ニッタク)」のロングセラー商品だ。
今回はそんな「ファスタークG-1」の開発に携わったNittaku商品企画部部長の松井潤一さんにお話を聞き、人気ラバーの開発の経緯やその歴史について掘り下げていく。
- 目次
- グリップとスピンがコンセプト
- 相性抜群のプラスチックボール登場が契機に
- 石川佳純選手や森薗政崇選手が使用し浸透
- 初のストロングスポンジ搭載で「打ち負けない」
- 上級者向けから「全方位に広がった」
- 「スマッシュも打ちやすい」女性にもおすすめ
- パッケージからこだわってブランド化へ >
グリップとスピンがコンセプト
―松井さん、よろしくお願いいたします
よろしくお願いします。
まず、ファスタークシリーズとしての説明から入らせていただくと、「ファスタークG-1」、「ファスタークP-1」、「ファスタークC-1」、「ファスタークS-1」という商品がありまして、それぞれラバーの開発コンセプト・特徴は違っています。その中でG-1に関しては、「G」はグリップ力という意味で、スピンがしっかりかけやすいということを1つのコンセプトに作った商品になります。
また、「Fastarc(ファスターク)」は造語で、「Fast(速さ)」と「Arc(弧線)という意味です。それが大枠のコンセプトでその中で「G-1」がグリップ力というカテゴリになっています。
相性抜群のプラスチックボール登場が契機に
―「ファスタークG-1」はかなり人気の商品だと思いますが、どういったユーザーに使われていますか
10年以上前に発売して商品自体は変わっていません。少し硬めのスポンジで、上級者向けのラバーとして発売しました。
発売して間もなく石川(佳純)選手が使用されて、トップ選手が「ファスターク」を使用してくださることで、少しずつ広まっていった、ということはあるかなと思います。
ある程度広まっていったところで、2014年ぐらいにボールの素材がセルロイド製からプラスチック製に変わり、そのプラスチックボールとの相性が非常に良かったのです。スポンジの硬さとスピンと非常に相性が良くて、プラスチックボールになって、より「ファスタークG-1」という商品が注目されるようになりました。
男子では森薗政崇選手がバックのチキータという技術を使う際、非常に「ファスタークG-1」がやりやすいということで、男子選手にも使っていただけるようになりました。男子女子共にトップ選手に使っていただいたことで、より人気になっていきました。
石川佳純選手や森薗政崇選手が使用し浸透
―最初に石川選手や森薗選手が「ファスタークG-1」を使われるきっかけは何かあったんですか
日々、用具提案はさせていただいています。新しい商品が出たら「ぜひ使ってほしい」ということで、提案をしていく中で使っていただいたという形ですね。発売してすぐにみなさんに使っていただきました。
初のストロングスポンジ搭載で「打ち負けない」
―硬さなどの特徴はあると思いますが、他に従来の商品との違いはありますか
当時、弊社としては初めてスポンジの気泡が粗いストロングスポンジといわれるスポンジを使いました。気泡が粗い分、今までよりもしっかりとスポンジに食い込んで打ち負けない。それまでは細かい気泡のスポンジのようなが主流でしたが、より打ち負けないで、深く食い込むスポンジを採用しました。
―発売から12年経った今でもかなり人気の商品ですよね
そうですね。最初からすぐに(人気が出た)というわけではなく、徐々に人気が出てきました。選手に使用していただいたということもありますし、プラスチックボールに変わって(ボールとの)相性がよりよくなったということもあります。
時代の流れに沿うように、周り(の環境)が「G-1」を押し上げてくれるような流れが出た。タイミングよくいろいろな環境が整っていったということもあって、ここまで続いたのだと思います。
上級者向けから「全方位に広がった」
―どんなユーザーをターゲットにしていますか
「G-1」に関しては、当時は「上級者向け」というコンセプトで出していましたが、プラスチックはより凹みにくいボールになっているので、ファスタークG-1の「上級者じゃないと扱えない」という特性が薄まりました。
今はレディース層や中高生も含めて使えるようにもなってきています。上級者用というコンセプトで当時は発売しましたが、そこから徐々に全方位に広がっていっている。扱う分には「中級者」の方にも十分に勧められるように広がっていきました。
「スマッシュも打ちやすい」女性にもおすすめ
―どういう人が使いやすい、という特徴などはありますか
やはり回転が一番の特徴で、特に自ら回転をかけるような戦術・戦型の方におすすめです。例えば、サービスや3球目でしっかりドライブをかけるとか、台上でスピンを重視するような技術を駆使する方には非常におすすめの商品です。
また、スピン重視のラバーだとスマッシュが逆にやりづらくなることがありますが、伊藤(美誠)選手などは「スマッシュもやりやすい」ということで使っていただいています。レディース層の方にもおすすめできるような商品だと思います。
弊社がおすすめするラバーの選び方としては、「ファクティブ」という4000円(税抜)の中級車向けラバーで自分のプレースタイルを探し、スピン系なら「G-1」、飛距離・スピード系なら「P-1」、スピード系で柔らかいのが好みであれば「S-1」、S-1の柔らかいスポンジとG-1のスピン系シートを合わせた安定感が特長の「C-1」と、「ファスタークシリーズ」の4種のラバーから、自分のプレースタイルに合わせて選ぶというのがあります。
最初の中級者・脱入門者の方は「ファクティブ」を選んでいただいて、そこから合う戦型に分けていく。その中で「G-1」はグリップ・スピンというところに特徴があるラバーになっています。
パッケージからこだわってブランド化へ
―「G-1」を作っていく上で苦労した点などはありましたか
「イメージをガラッと変えよう」ということで、例えばパッケージだとか、名前、ロゴ、デザインだとか、本体の性能だけではなく、ラバー全体でブランドを作ろうということで、いろいろと考えながら作った記憶があります。
コンセプトも「扱いやすくて万人受けするラバー」というよりも、「尖っていても選手に深く刺さるようなラバー」というところを全体的に出せるようなブランド作りを意識しました。
―最後に「G-1」の歴史を振り返っていただけますか
(商品を)出してすぐは(売れ行きは)そこまでだったかもしれないですが、徐々に浸透していったと思います。
弊社の商品の中では間違いなく人気ですし、卓球王国ランキングとかだとずっと1位を獲り続けているので。「日本で一番売れているラバー」だと思います。
一時、圏外に落ちた時もありました。2015年の2月に圏外に落ちて、次の3月には2位になっています。プラスチックボールが発売されて一般の方に浸透するまでに1年くらいはかかっているので。やはりプラスチックボールになってから復活していったということはあるかなと思います。いろんな追い風が節目節目にあって、今も1位になっているということです。
―ありがとうございました
ありがとうございました。
今回は松井潤一さんへのインタビューを通して、ラバーの中で不動の人気を誇るNittakuの「ファスタークG-1」の歴史を振り返ることができた。その人気の裏側には、商品としての性能はもちろん、ボール変更のタイミングなどの要素もあったことが分かった。
節目節目で時代の流れも味方につけ、日本一売れているラバーとして定着した「ファスタークG-1」。今後も多くの卓球プレイヤーに愛されていくに違いない。
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