【インタビュー】人気卓球YouTuber「卓キチ」が活動を続ける原動力とは【後編】

　YouTubeチャンネル登録者数は22万人、総再生回数は5億8000万回を超える（※2022年11月時点）、日本を代表する卓球YouTuber「卓キチ」こと中西淳さん。学生時代から卓球を愛し、2018年ごろから卓球YouTuberとしての活動を本格的にスタートした中西さんは、2018年末には当時働いていた会社を辞め、YouTube一本で生活していくことを決意したという。

　インタビュー後編では、卓球YouTuberとしての歴史の振り返りや活動への思い、今後の展望などを深掘りしていく。

目次[ 閉じる ]: YouTuber一本に専念きっかけはバズった「卓球あるある」; 会社員時代には毎日勉強国家資格など10の資格を取得; 気づいた「笑い」の大切さ動画制作の原動力に; 目標はチャンネル登録者50万人も「目先のことに集中したい」; 関連記事

YouTuber一本に専念きっかけはバズった「卓球あるある」

―2018年末に会社を辞めて、そこから5ヶ月くらいは卓球コーチをしながらYouTuberとして活動していたんですね

　そうですね。約5ヶ月間卓球コーチをやっていたんですけど、お金のためということももちろんあったかもしれないですけど、どちらかというとコーチをやってみたかった、というのが大きな理由ですね。お金を稼ぐだけだったら他のバイトがいくらでもあるので。

―そこからYouTube一本でやっていこうと思えたきっかけは何かあったんでしょうか？

　それまでは主に試合動画をYouTubeにアップしていたんですけど、たまにふざけた動画を出していて2019年の5月に「卓球あるある」系の動画を出しました。今までは試合動画で多くても1万回再生程度だったんですけど、その卓球あるあるの動画がいきなり20万回再生とバズったんですね。そこからもう今に至るという感じなんですけど、もちろん時期によって波はありましたね。

―最初に試合動画をアップし始めたのはどんなきっかけがあったんですか？

　5、6年くらい前から卓球にすごくハマって、毎週試合に出ていた時期がありました。そんな時に、「ただただ試合をして帰るのももったいないな」と思って、自分で映像分析をするようになったんです。カメラを設置して、試合中の自分のプレー動画を撮って。

　そんな時に、卓球YouTuberの「まさコーチ」という方がいて、僕が勝手に師匠と呼んでいる人なんですけど、その人とオープン戦の大会で当たることがありました。その時に、まさコーチが僕との対戦を動画に撮っていたんですよ。その動画をまさコーチがYouTubeに上げてくれて、3000回再生、4000回再生というふうに再生回数が上がっていくんですけど、それが伸びていくのがたまらなくて、めちゃくちゃ気持ち良かったんですよね。快感というか。

　自分の周りでも結構話題になっていて、連絡をもらったりしたので。「これ面白いな」と思って、そこから自分もYouTubeを始めて、試合動画などを投稿するようになりました。

会社員時代には毎日勉強国家資格など10の資格を取得

―YouTubeへの投稿をきっかけに勤めていた会社を辞めるというのは、大きな決断だったと思います。どんな思いでYouTube一本に専念しようと決められたのでしょうか？

　仕事が嫌いだったわけではないんですけど、「卓球をやりたい」という思いがすごく強くて。

　あと、一応社会人としては4年半以上働いていて、実は資格を10個くらい持っているんですよ。国家資格も持っています。社会人になって、毎日1時間から2時間コツコツ仕事終わりに勉強していて。

―すごいですね。ちなみにどんな資格を持っているんですか？

　IT系企業で働いていたので「基本情報技術者」「ＩＴパスポート」という国家資格を持っています。その上位の「応用情報技術者」はあと4点足らずに落ちました(笑)。あとは「診療情報管理士」「医療情報技士」「ITIL」「CCNA」「CAPM」「危険物取扱者(3種類)」などさまざまな種類の資格持っています。

　「情報技術検定1級」「計算技術検定2級」「そろばん検定3級」「簿記3級」などの検定にも合格しています。

―そういった資格を持っているという保険があったからこそ、YouTubeに挑戦できたのですね

　「卓球YouTuberでだめだったらまた戻ろう」という思いはどこかにありますね。卓球YouTubeを本業にしだしてからは、全く勉強しなくなったんですけどね(笑)。今は本当に卓球YouTube一本でやっているので、綱渡り状態ですが楽しくやれています。

気づいた「笑い」の大切さ動画制作の原動力に

―バズるきっかけとなった「卓球あるある動画」を出すことになったきっかけは何かあったんでしょうか？

　もともと小学生のころから変わり者って言われていて、友達から「芸人になればいいじゃん」って言われたり、授業で変なこと喋ってよく笑われるみたいな。多分、本当にクラスの中で一番ぐらいの変わり者だったんですね。

　でも、やっぱり社会人1年目2年目になると現実を突きつけられることがあって、残業時間が多かったり、社内でコミュニケーションを取るのが難しかったりすることがありました。仕事が忙しかったこともあって「人生疲れたな」っていう時期もあって。でも、そういうときに卓球をやったらメンタル的にも復活します。

　そして、「笑い」ってすごく大事だなって実感したんです。

　元々、お笑いとかコメディ系のアニメを見るのが好きで、落ち込んでいるときにそういうものを見て笑うと、落ち込むのが馬鹿らしくなっちゃうんですよね。「笑い」の力はめちゃくちゃすごいなという思いがあって、僕と同じように卓球がうまくいかなかったり、同じような悩みを持っていたりする人は世の中いっぱいいると思うんです。そんな人々に、僕の動画を見てちょっとでも笑ってもらって、気分リセットして欲しいなって思いながら動画を作っています。そういう思いで「笑い」の要素を入れた卓球あるある動画などを作ったりしている部分もあります。

―素晴らしいですね

　「笑い」をどんどん他の人に提供したいなって思っています。元々「馬鹿みたいなことをやって他の人を笑わせたい」という思いはずっとあったので、卓球を真面目にやっている傍ら、ちょっとずつそういうネタ動画もアップしていこうと思っていました。人を笑わせるのが好きだったので、ネタ系はずっとやりたいと思っていたんですよ。

　逆に試合動画とかをアップしているのは、元々無名校出身で弱かったけど、ずっと続けていればこれだけ強くなれるよということで、卓球がうまくいかない人へのエールになれればと思っています。こういう一般人でも頑張れるんだぞ、みたいな部分は試合動画で見せたくて。だから試合動画のような真面目な動画と、「卓球あるある」みたいなふざけている動画を両方アップするっていう状態になっちゃっていますね(笑)。

―それはいろんな人を勇気づけるためにやっているってことですね

　そこが自分の生きがいになっているのかなと思います。自分みたいな人間がこうやって何万人もの方に観てもらえて、役に立つようになると考えたら、自己肯定感もめちゃくちゃ上がりました。自分が笑うのも好きだし、人が笑うのが好きなので、そこは結構モチベーションというか自分の行動力の源になっていると思います。

目標はチャンネル登録者50万人も「目先のことに集中したい」

―今はどのような生活を送っていますか？

　1週間全部休みだけど1週間全部仕事、みたいな感じです。何かしら予定は入れていますね。もちろん、2週間に1回ぐらい何もしない日とかもあります。

　何もない日はSNSを見たり、YouTubeを見たり分析したり、漫画やアニメを見たりしています。人と会う時間も1人の時間も両方大事だと思うので、そこはバランスを考えています。人と会う方がいろいろ吸収できるけど、逆に1人じゃないとクリエイティブになれないこともあるので。両方の時間を確保するように自分で調整しています。

―最後に、今後の目標を教えてください

　物事を長期的に見るよりは目先のことに集中したいタイプというか。目標設定を大きくしすぎると視野が狭まったり、レールから外れたときの崩れ方が大きいと思うので、過去や未来よりも「今」を大切にしています。

　卓球もそうなんですけど、目の前の一本を取りに行くっていうスタイルでYouTubeをやっているので通ずる部分があると思います。なので、まずは今できることを精一杯やっていきたいと思っています。

　ただ、やっぱりいつどうなるかわからないので、まず今の活動を途切らせないようにすることですね。YouTubeのチャンネル登録者数を減らさずに登録者50万人欲しいなっていうのはあります。

―ありがとうございました

　ありがとうございました！

　卓球界を盛り上げたいという熱い思いだけではなく、「笑わせたい」「励ましたい」という他者への貢献をYouTubeの動画配信で表現している中西さん。常に視聴者がどうすれば喜ぶかを考え、「長期的に考えるより、目の前の一本を取りに行く」というスタイルを続けてきたからこそ、今の成功につながっているのだろう。

　「卓キチ」として、次はどんなことをして我々を楽しませてくれるのだろうか。中西さんの今後の活動にも、引き続き注目していきたい。